2011年11月1日火曜日

ヨーロッパと日本の自転車事情

  2007年PBPでフランスを走り、日本との違いを実感しました。
2011年、今回は都市設計、自転車と車、そんなことを考えながらヨーロッパを走っていました。
  ホントは2011年旅行記を書き終わった後にこの話をまとめるつもりでしたが、ちょうど警察庁の自転車対策発表によりネタ的に旬なので今書きたいと思います。2回の旅行で高々5500km走っただけなので勘違いも多いかもしれません。


■走ってみて気づいたこと、感じたこと
  □道路状況
    ○郊外&全般
・街中の制限速度は低く、実際走行速度もゆっくり。街(小さな住宅地でも)の中と外の区別が明確で速度にメリハリがある。
・ラウンドアバウト(ロータリー)が多く、日本より信号が少ない。優先道路の概念が日本よりハッキリしている。
・自転車を追い抜くときは1.5m以上間隔を空けろ標識。
・峠では登り側のみに自転車レーン。
・幹線道路以外は車が少なく、自転車通行に十分なスペース。トンネルも十分広い。
    ○都市部
・大型車が少ない。大型は中心部に進入禁止とか。
・昼間は子供が遊ぶから車進入禁止な住宅街の細い路地。
・路上パーキングは日本より少なく、歩道側に完全にめり込んでいる(一番外側車線の更に外に配置)ものが多い。
・信号機は交差点手前側のみに存在し、交差する道路の信号は見えない。停止線をはみ出ると自分用信号も見えない。
・自転車レーンは日本とさほど変わらず走りづらい。道も狭い。段差のある歩道上をクネクネ。

  □ホテル
・エレベーターは少ない。自転車は部屋に入れるか、ガレージ等で預かって貰える。

  □店
・日曜、夜は開いていない。補給食に困る。

  □鉄道
・THALYSやICE等一部の国際電車、地下鉄を除いて自転車そのまま乗車可能な電車が多い。

  □車
・自転車を追い抜くときは大きく迂回する。
・街中の細い路地で十分に間隔を取れない場合は無理に抜かない。
・自転車側の道路に優先権がある場合、車は確実に待つ。
・信号が青になっても直ぐ発信しない場合はクラクション[パリ]

  □自転車乗り
・ロード率は高くない。
・高齢の夫婦、家族がサイクリングロードをサイクリング。
・子供を乗せたママチャリも存在する。
・前カゴは殆ど無い。パニアバッグ多し。
・ママチャリも日本より速い。
・信号を守って規則正しく走っているわけでは無い。

  □オランダ特有
・高速道路や車専用の幹線道路以外は車が少ない。
・十分な幅があるのに車は対面通行。
・原付と共用で段差が無く歩道の外側にある自転車レーン。
・車道片側に対向車線とセットの2倍の幅の自転車道。
・都市部の交差点は自転車専用の信号&押しボタン。信号の切り替えは早く、押した後さほど待たずに青になる。
・張り巡らされた自転車道路網。地図もしっかり。(ベルギーも)
・自転車が移動手段。
・ヘルメット率はほぼ0。

  □レンタサイクル
・都市部の無人ステーション型レンタサイクル。
・タンデム、トレーラーのレンタルも見かける。


■日本では
・ママチャリは完全に歩行者感覚。
・ロードレーサーなど競技や趣味で乗る人との二極化。
・都市、郊外の区別は無い。
・土地はあるのに劣悪な郊外の自転車レーン。
・車依存。
・コンビニ乱立で長距離(夜間)ツーリングは意外と向いている。宿泊時の自転車保管が問題。


■意識の違い
○自転車
  海外を走って感じるのは、自転車は車両扱いされているということ。こちらの道路に優先権がある場合、車は自転車の通過を確実に待つ。細い路地から出てきた車により減速を余儀なくされる、という日本ではありふれた状況に合うことは1ヶ月の間に一度も無かった。自転車乗りがそう考えているように車も自転車を車道を走る一員として認めている。
  アメリカを走った友人がこんなことを言っていた。日本では「自転車が車道なんて走ってるんじゃねえ、ムカツク」なのに、海外だと「自転車は車道を走るもんだ、ただしオレにとっては邪魔でムカツク」になる。幅寄せ等してくる悪質なドライバーにもそういった違いがあるように感じられると。

  自転車は車両というのは=車という意味ではない。おそらくアチラの人は、歩行者より速く遠くまで移動することができ段差に弱い自転車が歩道ではなく車道を走ることを納得している。そして車道では交通弱者であることも理解しているため、自転車に対する運転は優しい。

  日本で自転車が歩行者感覚なのは、おそらく次のような理由による。
・自転車での移動距離が短い。殆どが徒歩に置き換わるものとして利用している。
・歩行者、自転車兼用の歩道の存在。

  我々ロード乗りが声をあげて自転車の速度、走行距離を主張したところで、多くの日本人にとって自転車は歩行のオプションに過ぎないのだ。自転車というカテゴリーは存在しない。


○街と道
  ヨーロッパでは街と、そこを繋ぐ道との区別がハッキリしている。人々が生活する街では、車の制限速度は低く、また大型車が進入禁止の小さな町も多い。大型進入禁止いかんに関わらず、幹線道路以外の道では大型トラックを不思議なほど見ない。

  日本では街と道といった感覚は無く、街の中に道がある。車中心の都市設計であり、物理的に通れない場合を除いて様々な車がどこにでも進入する。

  以前、我が家の前のさほど広くない道にバスを通すか否かというアンケートが回ってきた。鈴木家は反対したが今ではすれ違いが困難なその道にバスが通っている。
  狭い道だからバスは通さないほうがいいね、なんて考える人よりも家の前にバスが通ったほうが便利と考える人が多いのだろう。子供が遊ぶために日中は道路を封鎖していたベルギーの住宅街とは正反対だ。
  狭い道を大型が走る結果、自転車を追い抜けずにイライラして不幸になる。だけどやっぱり日本は車中心で、狭い道だから…とはならずに自転車が邪魔扱いされる。

  ヨーロッパ(特にフランス)の車は狭い道路を自転車が走っている時、安全に追い抜ける道幅になるまで自転車の後ろを辛抱強くゆっくり走る。強引な追い抜きは殆ど無い。待つことに関して我慢強いのかというとそうでも無く、信号が青になった瞬間に発車しないとクラクションを鳴らす。
  狭い道路で自転車を追い越せないのは車が道に対して大きすぎるからだ。自転車乗りの勝手な妄想ではあるが大型車の少ない町を見ると、そんな風に考えているように思える。(法により無理やり納得させられている可能性も高いが)


■自転車が走りやすい社会に
○意識
  ここまでヨーロッパを走って感じたことを書いたが、日本もヨーロッパのように、とは思っていない。
車依存な日本の交通事情によって受けている恩恵も大きい。今の日本の道路網で街中に大型が入れなくなったら流通は大混乱だし、amazonからの荷物だって1日じゃ届かなくなる。
  都市の細い道を自転車が我が物顔で走ったらそれで渋滞が発生する。余裕持って追い抜けるまで待てなんて言える状況ではない。そんな道では車をパスさせたり、歩道を走るほうが交通事情に合っている。

  車道を走る権利を主張して車側にのみ譲歩しろと言っているわけではなく、ただ自転車という歩行者と違う乗り物を認めて欲しい。
狭い道や短い距離、都市部の移動手段として自転車は適していると思う。皆がそんな風に考えれば街はもう少し私の好みになる。
  自転車側も歩行者より速く遠くに移動できる恩恵を受けたいのであれば、弱者である歩行者と同じように振舞っていてはダメだ。


○オランダ
  オランダでは1991 年に自転車利用の国家戦略として「bicycle Master Plan」を策定し車中心社会からの転換に成功、自転車事情を語るならオランダというほどの自転車大国となっている。

  国土の殆どが平坦で人口が集中していない為か、国全体の人口密度が日本より高いとは思えなかった(都市の人口密度もそれなりに高いはずなんだけど)。
この自転車に向いた平坦な土地が成功の理由の一つだろうし、街と道というヨーロッパの都市だからこそ大規模なテコ入れが出来たのであって、日本で同じことをするのはとても無理だと感じる。

  都市の渋滞を解消するために車線を対面通行に減らして車を使いにくくする、といった過激な方法を果たして国民が納得するのか。都市と都市を結ぶ大規模な幹線道路も整備されているとは言い難い。
  自転車だけでは長距離の移動は大変であり、交通手段としてメインで利用するにはこれを補う方法、電車での運搬が必要。日本の都市部の電車に自転車をそのまま乗せるスペースは無い。


○道路整備
  基本的に日本の道路は自転車の事は全く考えられていない。土地が無い都心で仕方なし、ではなく郊外においてもそれは同じ。
・車の幅ギリギリなトンネル。迂回しようにもルートはそのトンネルを通る道しか無い。
・凹凸のある白線。
・タイヤのはまるグレーチング。
・郊外で十分な道幅はあるのに歩道内に作られた段差の多い自転車レーン。
鉄道だって田舎の乗客率が高くない路線は自転車乗車可能にしていけばいい。有料で。

  都市中心部をオランダには出来ないと思う。歩道を歩行者と同じ速度で進むのがもしかしたらベストな手段なのかもしれない。例えそれが今日の「自転車が歩行者扱い」という混乱を招いたその場しのぎの愚策だとしても。
それでも中心を避ける環状線には自転車が走りやすいレーンを用意するとか、やれることはある。


■この度の警視庁発表、対策について
  今回自転車は車道という大転換を発表したのは、最近の自転車ブームで増えた自転車事故の対応によるところが大きいのではないか。かなりの速度を出しながら歩行者気分のまま、そんな自転車乗りが多い為に自転車は車両と明確に意識付ける。
従ってこの日記の「自転車が走りやすい社会」という話と少し異なるかもしれない。
※自転車事故、事故全体における比率は増えているものの件数は近年減少傾向にあるというご指摘を受けました。

  発表資料を見た限りでは一部報道であるような無理に車道に追い出そうとしているという感じはしない。危ないから歩道走りたいんだったら押せばいいじゃん。

・横断歩道横の自転車横断帯は止め、車道側を横断するようにする。
はかなり評価。車道を走っている自転車が人が渡っている交差する横断歩道に突っ込んでいくとか減るはず。

  なんにせよ自転車が車両扱い徹底はいい傾向。設備も整っていないのに…という声もわかるが、まず意識を変えるのも重要。
車道への流れが広がっていった後、自転車を取り巻く環境も徐々に良くなっていくと期待したい。


■長くなったので短くまとめ
○自転車は車両と言うには
  自転車乗りが歩行者を弱者として意識すること、車両として交通ルールを守ること、それから車が自転車を車両と認めること。
○自転車が走りやすい環境を整えないと歩行者の延長のままじゃない?
  都市部は密度的に仕方ない感じするけど、現状の郊外も酷いもの。せめて広い道に新たな自転車レーン作るときは歩道分離にしてくれ。
○自転車も車も歩行者も、みんながそこそこ幸せになればいい。


※2011/11/06 追記
↑はまとめがまとめになっていないので、もう少し言いたい事まとめてみました。
もしこれを読んで気に入って貰えたのであれば、「蛇足の自転車事情」ついでにこちらも流し見て頂けたら幸いです。つたない文章でわかりにくいですが、自転車と車、あるいは歩行者の対立を望んでいるわけではありません。
  あとは冒頭にも書いてるようにいち旅行者がたった5000km走った感想です。これがヨーロッパだなんて言えるほど全てを見たとは思っていません。(紹介してくれるのは嬉しいですが、「ヨーロッパは100%こうだ」扱いだとちょっと焦ります…)

  オランダのサイクリングロードの写真は、2011年ヨーロッパ旅行記の
・PBP2011 Stage05_3:自転車天国
このあたりから数回にかけて載せています。

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